STEP2|歩行のズレが起こった理由
— 靴・姿勢・生活習慣が、少しずつ歩き方を変えてきた —
STEP1では、「歩行そのものが、体の現在地を教えてくれる」というお話をしました。
ここでは一歩進んで、なぜ歩き方がズレてしまったのかを、やさしく整理していきます。
多くの方が、「いつから歩き方がおかしくなったのか分からない」とおっしゃいます。
実は、ある日突然ズレたわけではなく、
靴・姿勢・座り方・床環境・生活リズムなどが、何年・何十年とかけて
少しずつ歩行のバランスを変えてきた結果です。
ここを整理しておくと、「私の体はダメだから」ではなく、「こういう理由があったのか」と、
自分を責めずに次のSTEPへ進みやすくなります。
■ 1.靴が足裏の“順番”を変えてしまうことがある
まず、とても大きな影響を与えているのが靴です。
・かかとの高い靴
・つま先が細く、親指が内側に押し込まれる靴
・クッション性が強すぎて、足裏の感覚がぼやけてしまう靴
・サイズが少し大きく、指で靴をつかむようにして履いている靴
こうした靴は、本来「かかと → 小指側 → 母趾球」と流れてほしい重心の順番を、
知らないあいだに変えてしまうことがあります。
例えば、
- ・かかとに体重が乗りっぱなしで、前へ進みにくくなる
- ・小指側にばかり体重が流れ、足首が外側に倒れやすくなる
- ・母趾球がうまく使えず、“けり出す力”が弱くなる
こうした状態が長く続くと、足裏だけでなく、
膝・股関節・骨盤・背骨へと、少しずつ負担が上へ伝わっていきます。
■ 2.姿勢と座り方が「歩き始めの条件」を決めてしまう
次に大きいのが、日常の姿勢と座り方です。
・長時間のデスクワーク
・片側に体重を預けて座るクセ
・足を組むのが当たり前になっている
・ソファで背中を丸めたまま長く座る
これらはすべて、骨盤と背骨の位置をゆっくり変えてしまう要因になります。
骨盤が前に倒れすぎたり、逆に後ろへ寝てしまったりすると、
立ち上がったときの「スタートの姿勢」がすでにズレた状態になります。
その結果、
- ・一歩目から膝が内側や外側へ流れやすくなる
- ・腰が反りすぎて、常に腰部に負担がかかる
- ・背中が丸くなり、足だけで頑張って歩く形になる
歩行だけを見ても、本当の原因は
「歩く前の座り方・立ち方」に隠れていることが少なくありません。
■ 3.生活習慣と環境が、“歩く量と質”をゆっくり変えてきた
さらに、現代ならではの生活習慣・環境も大きな要因です。
・エレベーターやエスカレーター中心の移動
・車移動が多く、歩く時間そのものが短い
・フラットで硬い床(コンクリート・フローリング)が多い
・スマホを見ながらの歩行で、頭が前に出るクセ
これらは、「どのくらい歩くか」だけでなく、「どのように歩いているか」にも影響します。
足裏の感覚が育つ前にクッションの強い靴を履き続けると、
地面からの情報が体に届きにくくなり、重心の位置をうまくつかめなくなっていきます。
■ 4.体は「ダメになった」のではなく、“がんばって合わせてきた”
ここまで読むと、
「靴も姿勢も生活習慣も、全部ダメだったのかな…」
と感じてしまう方もおられるかもしれません。
でも、そうではありません。
体はむしろ、その環境の中で一生懸命バランスを取ろうとしてきただけなのです。
・合わない靴でも、とりあえず前へ進めるように
・長時間座る生活でも、何とか立ち上がれるように
・硬い床でも、膝や腰を守れるように
体は、あなたの生活に合わせてくれていただけ。
その結果として、今の歩き方や姿勢になっている――
そう考えてあげると、「直さなきゃ」ではなく、「整えてあげたい」に変わっていきます。
■ 5.理由が分かると、整え方はやさしくできる
歩行のズレには、必ず理由があります。
その理由が分かると、「これはダメ」「あれもダメ」という考え方から離れることができます。
代わりに、
- ・靴の選び方を少し変えてみる
- ・座り方と立ち上がり方を、ほんの少し丁寧にする
- ・1日の中で“ゆっくり歩く時間”を少しだけ増やす
こうした小さな修正が、歩行の質を大きく変えていきます。
そして次のSTEP3では、「理想の歩行に近づくために、今日からできること」を、
より具体的にお伝えしていきます。
身体観察家/身体教育家 佐藤 昌史(1967年生)
大阪市中央区なんばにて、歩行・姿勢・足裏感覚・日常動作・食習慣など、
“体の観察力”を育てる身体教育を行なっています。
延べ80,000件以上の経験をもとに、からだ本来の使い方へ静かに戻る
“やさしい整え方”と歩行改善をお伝えしています。
著書は Amazonランキング(健康ジャンル)で3作連続1位。
50代からの体の変化に寄り添い、「歩くだけで体が軽くなる」ための視点を大切にしています。
ご予約・お問合せ:info@cs60japan.com
電話番号:070-1045-4503
※当ページの内容は医療行為・診断・治療を目的としたものではありません。必要に応じて医療機関の受診をご検討ください。